出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
戸籍を移すための手続きが必要になります。
たとえば山田太郎さんと佐藤花子さんが結婚して花子さんが山田姓になり、子ども(まことさん) を授かった3年後に離婚した場合を例にとって見てみましよう。夫婦が離婚すると、婚姻のときに氏を変更した方は原則として婚姻前の姓に戻ることになっています。例でいうと、妻の花子さんが旧姓の佐藤に戻るわけです。これを復氏といいます。復氏いた場合、戸結の取扱いは、①婚姻前の籍に入る、②新戸籍を編製する、のいずれかとなりますが、原則的には①の扱いであり、婚姻前の籍がすでにない場合や復氏する人が新戸籍編製の届出をした場合に限り②の扱いとなります (戸籍法19条)。
これはあくまで復氏する当事者だけの扱いであり、子どるについては戸籍の変動はありません。したがって、 たとえ花子さんが親権者になっていたとしても、 まことさんは父である山田太郎さんの戸籍に残るということになります。ところで、一度復氏した人でも離婚の日から3か月以内に届出(婚氏続称屈)をすれは離婚前の姓を名乗ることができます。つまり、花子さんが離婚後も山田性を名乗ることは可能ということです。この場合、 表面上は花子さんとまことさんは同じ山田姓になりますが、戸籍上は婚氏続称の届けをした人を筆頭者とする新戸籍が編製されるので 花子さんとまことさんは別の戸籍に記載されていることになります。
子どもの戸籍を移動させる方法
では、花子さんがまことさんを同じ戸籍に入れる方法はあるのでしょうか。 まず、花子さんが親権者になっている場合には、家庭裁判所に「子の氏の変更許可の審判」(216ページ) を申し立てることによって、まことさんの氏を花子さんの氏に変えて、花子さんの戸籍に入れることができます。親権者になれば自動的に子どもも自分の戸籍に入れられるようにも思えますが、実際にはこのような氏の変更許可の手続きをとらなければなりません。
一般に氏の変更には変更を必要とする重大な事情が必要とされていますが、子どもの氏を親と同じにするという変更については比較的容易に認められるようです。この審判を申し立てるには、親権者が離婚後の自分の戸籍謄本と、離婚した相手の戸籍勝本を添えて家庭裁判所に提出します。裁判所の許可を得た後、すぐに役所に「入籍届」をしましょう。
一方、花子さんが親権者になっていない場合には、花子さんの側からこの審判を申し立てることはできません。親権者ではないが監護者となっで子どもを自分の籍に入れたいというような場合には、親権者である太郎さんの側からこの審判申立てをしてもらうことになります。
ただし、 子どもが15歳以上であれば、子とも自身が「子の氏の変更許可の審判 」 の申立てをすることができます。 父の戸籍に入っている子ともが母親と同じ戸籍に入りたい場合には、 母が親権者でなくても同じ戸籍に入る手続さをすることができます。
なお、 このようにして母と同じ氏に改めた子が未成年であった場合は、 成人したときから1年以内 (つまり20歳である間) に市役所に届出をすれば、元の氏に戻ることができます。