人間不信の向こう側には何がある?

人間不信の向こう側には何がある?

出典: 事件はラブホで起きている
長年探偵をやってると、よく聞かれる質問がある。 「探偵なんてやってて、人間不信になったりしないんですか?」 僕の答えは毎回こうだ。 「そりゃ、なるに決まってんだろwww」 冗談めかして言っているけど、けっこうガチ。探偵って、人の心の内部を毎日のように覗く仕事。それも、自分自身の目で人間不信に陥るような瞬間を目の当たりにしなきゃいけない。 例えばこんな現場――依頼者である奥さんから「今日は息子の誕生日だから早く帰ってきて」とLINEが届いているのに、「ごめん、今日は客様対応があるから遅くなりそう」と嘘をついて、不倫相手の女のおっぱいを揉みながらラブホに入っていく旦那の姿を僕はビデオカメラで撮影する。 このビデオカメラも可哀そうだよね、本当は幸せな家庭のパパママに買われて、運動会なんかで子どもの成長を記録するために使われるはずだったのに……まさか、こんなにも他人のセックスを記録するために使われるなんて……すまん。 過度に何度もこんな現場に立ち会っていれば、そりゃ人間不信にもなる。特に異性不信は加速する。だって探偵ってのは、男女関係のもつれのど真ん中に突っ込んでいく職業だから。そういえば昔、探偵に憧れて入社してきた真面目な若い男の子がいた。ピュアで「浮気なんて絶対に許せない!」ってタイプだった。最初のうちは、「浮気する奴を成敗したい!」という正義感に燃えていた。でも、わずか数ヶ月でダークサイドに堕ちていった。彼は恋人さえ信じられなくなり、恋人を問い詰めるようになり破局。結局、探偵も辞めた。 そんな僕でもやっぱり、人間不信には拍車がかかる。いや、人間を信じ続けるには、あまりにキツい現場が多すぎるのが探偵っていう仕事……でも、だからこそ言えることがある。それは、「人間不信」にはその先があるってこと。 そもそも、人間不信ってネガティブなイメージで使われる言葉だけど、ひとつの学びだと思うんだよね。人生のなかで避けて通れない、人生における必修科目みたいな感覚……わかるかな? どんなに幸せな家庭で、どんなに愛情を注がれて育ってきた人だって、遅かれ早かれ人生において必ず人間関係の挫折を経験する。その相手は友だちかもしれないし、恋人かもしれない。仕事仲間、家族……あるいは世界でいちばん信頼していた人かもしれない。だけど、そうした挫折こそが、人間関係における絶望を味わうこと……つまりは、人間不信になってからが、ようやく人生のスタートライン。 絶望するって、悪いことじゃない。むしろ「あぁ、この世界ってどうやら終わってんなぁ」と、一度ちゃんと自覚したほうがいい。自分この世の終わりの前夜を生きていることを自覚してからことが本当の勝負。ここから先は、その人の真価が問われる。 だから、あえてこう言いたい――まずは、人に絶望することから始めよう。話はそれからだ。 人は過去に囚われている。 そして、人間不信の底にいるときには、周りを観察する力も冷静さも失っちゃう。だって、信じてきた裏切られるぐらいなら、最初から無関心でいたほうが楽ちん。人間、辛いときほど楽な選択をしてしまいがちだよね。まぁ、心を閉ざして孤独に生きていくことも、立派な選択肢のひとつだけれども。 でも、思考を停止して人間不信にとどまり続けることは、観察を放棄していることと同義。探偵が尾行で対象者を注意深く観察し続けるように、真実や本質にたどり着くためにはやっぱり観察する覚悟、そしてテレビで距離を取りすぎる失尾してしまわないための勇気も必要だ。 人間不信を乗り越えた先にまっているのは、疑いながらも観察し、それでも信じようとする「姿勢」。これは何も盲目的に信じることとは違う。恐怖や不安を抱えながらも、「一歩を踏み出してみる」という意志であり、勇気。裏切られても、「もう一度信じてみよう」というあの感情の正体なんだと思う。 心のどこかでそう締めている自分がいたとしても、「この人なら信じてみたい」と思える相手に出会えたなら、その瞬間から人は再び人生を取り戻すことができる。 昨日まで他人でしかなかった誰かのひと言が、あなたの人生を劇的に変えることだってあるし、たった1日で世界が塗り替わってしまうこともある。 そして、きっと気づくはずだ――あなたが向かう先の街には、もはや死神は存在しないことを。

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