出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
夫婦どちらの戸籍にも離婚の事実が記載されます。
離婚した場合には、その戸籍が九ごと除籍簿 (婚姻や離婚などによって戸籍簿から除かれたものについてまとめた帳簿のこと)に移されるわけではなく筆頭者でない夫または妻の1人だけが戸籍から除籍されます。除籍された者については、婚姻前の戸籍に戻るか、自身が筆頭者となって新しい戸籍を作るという2つの道が用意されています。離婚届には「婚姻前の姓に戻る者の本籍」を記載する欄があり、その内容に沿って戸籍が復帰もしくは編製されるわけです。
このとき、除籍される者は婚姻前の姓に戻るのが原則とされていますが、婚姻中の姓をそのまま使いたいと希望する人もいます。その場合は、離婚成立から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」 (188ページ) を提出すれば、 婚姻中の姓を使うことが認められます。離婚には協議離婚、 調停離婚、審判離婚、裁判離婚がありますが、戸籍の身分事項欄には、 いずれによる離婚なのかが明記されます。 救判離婚の場合には判決の確定した年月日が、調停離婚では調停が成立した年月日が記載されます。
なお、離婚の事実が戸籍に反映されるのは、離婚が成立し、届けが正式に受理された後です。離婚協議がこじれて裁判などに
なった場合、 離婚を認める判決文が出る主で戸籍はそのままの状態で維持されることになります。
・戸籍の記載の具体例
たとえば田中一郎さんと鈴木花子さんが、夫の一郎さんを戸籍筆頭者として田中という氏を称する婚姻をした後、協議離婚したいとします。 まず夫の欄には「O年〇月〇日妻花子と協議離婚届出」 と記載されます。
一方、妻の方はというと、原則として婚姻前の戸籍 (鈴木) に戻るか、あるいは単独の新戸籍を作ることになります。 婚姻前の戸籍に戻る場合には妻の欄に「〇県〇市鈴木〇〇戸籍に入籍につき除籍」、単独の新戸籍の場合には「〇県〇市に新戸籍編成につき除籍」と記載 (戸籍がコンピュータ化されていない場合はバツ印の記載) されます。そして妻が入籍した戸籍 (新戸籍を作る場合も含む) には、いつ誰と離婚してその戸籍に入ってきたのかが記載されます。このように離婚後は、夫婦どちらの戸籍にも離婚したという身分事項が記載されます。
離婚により氏 (名字) を改めた配偶者は、離婚によって婚姻前の氏に復するのが原則となっています。そのため、花子さんの氏については、離婚後も花子さんが婚姻中の姓である田中を継続して使用したいのであれば、離婚成立の日から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届出」(以下、「届出」といいます)をする必要がありますが、届出を行えば、離婚後も婚姻中の氏(田中) を称することができます。 届出を申請する際には、 特別な理由は何ら必要なく、 田中一郎さんの了解を得る必要もありません。 花子さんの自由意思によって決めることができるので、具体的な手続きとしては、花子さんだけの署名押印があればよいことになります。離婚相手である一郎さんが、いくら自分の名字をそのまま使われるのは嫌だ 気に入らないといっても、これを阻止することはできません。