出典: 事件はラブホで起きている
「あなたは、なぜ不倫されるのか?」
えらく壮大なテーマを最終章に据えたものだと、自分でも思うけど、探偵として、僕が見てきた数々の修羅場を通じて、おぼろげながらもつかんだ答えのようなものを記しておきたい。
不倫された人は、まず「不倫された理由」を探し、次に自分を責める。
「不倫されたのは自分が悪かったから?」「自分に魅力がなくなったから?」「尽くし過ぎてしまったから?」「子育てに専念していたから?」「稼ぎが悪いから?」「セックスレスになってしまったから?」――おそらく、相手を真剣に考えて、大事にしてきたからこそ、自分の行動を否定的に振り返ってしまうのだろうと思う。
不倫は、最も信頼していた人間からの裏切りであり、著しく尊厳を傷つけられる行為。そして、不倫した配偶者を責める気持ちと自分を責める気持ちが同時に発生し、こう悩む。
「人を見る目がなかったのかな……? どうして見抜けなかったのだろう……?」
たまに僕は依頼者さんからこんなことを言われたりする。
「小沢さんを信じて依頼しようと思います! なぜなら私、人を見る目だけは自信があるんです!……あ、いや、でも結婚相手を見る目だけはなかったですね……」
けれど僕は声を大にして言いたい。たとえ不倫されたとしても、あなたに人を見る目がなかったわけじゃない。そんなもん、見抜ける人間なんていやしない。不倫した側だって、最初から裏切るつもりで結婚したわけじゃないはずだし、あの日の誓いは本心だったと思う。
「だけと人は変わる。愛情も変化していく。結婚は〝選び続ける〟行為だから、それが終わりを迎えることだって当然ある。だけど、選び続けてきた過去〝がありだった〟と限らない。だから、「見抜けなかった」と責める必要なんてない、と僕は思う。