出典: 事件はラブホで起きている
ここから先の文章はイナミさんに書いてもらった。探偵ではない、依頼者さん自身によるリアルドキュメントをお読みいただきたい。
不倫相手に豹変し、慰謝料の支払いを拒否された直後、休む間もなく、今度は配偶者と向き合わなければならなかった。突撃のあと、配偶者から届いた最初のLINEは、あっけないほど淡々としていた。
今回は迷惑かけてごめん。
彼女から全部聞いた訳ではないけど状況は把握しました。
そして俺の方から彼女には動かないように言ってあります。
やっぱりお前が……払わなくていいとあの子に言ったのは……当然といえば当然の展開だった。こればかりは、すんなり支払ってもらえると信じてしまった自分に責任がある。それに、彼女への慰謝料請求については、最初から弁護士さんにお願いするつもりでいたから、そこまでのダメージはなかった。
ただ、私のなかで最も重くのしかかっていた問題は「配偶者との別居」だった。前述のLINEに対し、私はクリスマス前は荷物をまとめて家を出て行くよう配偶者に返信をしており、何も彼もそれを望んでいると思っていた。だが実際は「俺の家でこもだん。」どこにも行かないよ」「「出ていけ」の無限ループ。私は困り果て、実家の母に相談した。
すぐ出てってくれると思うのは、甘かったな」
「私、ほんと……甘かった……」
「向こうの両親には?」
私が報告した。お義母さんに「男は見ないねって他人事みたいに言ってて、〝この子産まなかったことにする〟って言われた」
「母はぁ? お前の息子だろ!!」
「私、お義父さんは〝息子とは縁を切ります。慰謝料請求でも何でもご自由に〟って言ってた」
「母はぁああ? ……まぁ、いい歳した大人だから親が口出すことじゃないかもしれないけどさ。言い方ってもんがあるよね」
「私……、完全に甘く見てた。すぐ出ていくと思ってたし、ご両親が説得して連れて帰ってくれるって思ってた」
結局、不倫相手からは慰謝料の支払いを拒否され、別居も叶わず、詰めの甘さばかりが浮き彫りになっていく状況に、私は自分のふがいなさに嫌気がさしていた。
「母……よし。呼ぼうか。向こうの両親」
私「え?」
母「うちも呼ぼう。あいつと義両親、まとめて家族会議しよう。いい方向にいくとは思えないけど、とにかく家に連れ帰ってもらわないと気が済まない。大事な娘を嫁に出したんだから。バカだったら今ごろ、呼びつけて怒鳴ってるよ」
たしかに。父が全員を呼びつけて怒鳴り散らす姿がありありと想像できた。翌日、母が義父に連絡を取り、クリスマスに地獄の家族会議が開催されることになった。