出典: 事件はラブホで起きている
イナミさんの戦いは、まだ終わらない。むしろ不貞の証拠を入手してからが本番だ。先述したように、僕は無事に不貞の証拠が撮れた依頼者に対しては、不倫相手との直接示談交渉を勧める場合がある。
僕の見立てでは、ゆで卵の女は、話は通じる相手のように思えた。金銭的なメリットだけでなくイナミさんにとっても、不倫相手と直接話すことで見えてくるものもあるはず。だから、調査報告書を渡す際にそれとなく示談を勧めた。
それから数週間後、イナミさんからLINEが来た。
「こんにちは! その節は本当にありがとうございました! 頂いた報告書を武器にいよいよ話を
進めようと思うのですが、最後にちもうひとつだけ小沢さんに依頼したくて……女性には弁護士先生を通じて連絡する前に、まずは自分で直接会いに行って話をしたいと思い、何度か仕事終わりに会社から出てくるところから張り込んだんですが、旦那と落ち合ったりしてすぐに話しかけられなかったり、そもそも尾行してるうちに見失ってしまったりして全然声かけられなくて……それでもし可能であれば話しに行く当日、私も会社付近に待機している状態で、小沢さんにまた会社出たところから調査していただき、「旦那と離れた」と教えてもらったタイミングで声をかけられたら……と思ったんですが、こういった依頼も受けていただけるのでしょうか? ちなみに、〇月〇日を予定しています」
もちろん、快諾した。こうして僕は再びあのふたりの尾行をすることになった。