出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
公正証書に定めた養育費を変更することも、 やむを得ない事情があれば可能です。
養育費の額は、支払う側の経済的なレベルを標準にして定められますが、同居する側の生活水準にも関連するので、一方の収入や生活だけで決められるわけではありません。
基本的には、養育する側でない方の親が全面的に負担するものですが、養育する側にもそれなりに収入がある場合は、それも考慮に入れて決められます。
養育費の支払いは、一般的には月払いであることが多く、期間も長期にわたるケースが多いため、支払いが滞るようになった、 払ってくれなくなったというトラブルも目立ちます。
養育費は債権ですから、もし支払ってもらえないときには、一般の金銭債権の取立てと同様の処置をとることが可能です。しかし月々の額もそれほどの額でないだけに、手続きも煩雑です。かといって、不払いになればそれなりに経済的な痛手も被ります。 そこで、養育費の不払いについては上手に催促をする事が必要です。たとえば内容証明郵便を出してみるというやり方もあります。
しかし、一番確実なのは、離婚する際に養育費の支払いに関する約束を公正証書にすることです。公正証書は公証人に内容を証明してもらった書類で、「契約を履行しない場合は強制執行を受けても異存ありません」といった一文が記載されている場合は裁判所を通すことなく強制執行することができるという強い効力があります(191ページ)。したがって、何の理由もなく養育費を滞納し、催促されても応じなかった場合は給料の差押などを受けても文句は言えないことになります。
法的に強力な拘束力のある公正証書の内容を変えることはできるのでしょうか。実は、公正証書の内容を全く変更できないわけではありません。いったん決められた養育費を変更することはそう簡単ではありませんが、それでもやむを得ない事情がある場合には、相手に養育費の増減を請求することが可能です。
たとえば増額の理由としては、次のものがあげられます。①入学金など進学に伴う学費がある場合、②子どもがケガや病気で入院した場合、③受けとる側が病気や失職などで収入が低下した場合などです。
また、減額のケースとしては、①支払う側が病気や失職で収入が低下した場合、②受けとる側の収入が大幅にアップした場合などです。
養育費の支払いの場合、その履行は長期に渡りますから離婚協議の時点では予想もしなかった事態が起こることも十分に考えられます。
公正証書を作成した以上、可能な限りはその内容を守るべきですが、その内容が客観的に見て現実的ではないと判断される場合には裁判所でも内容を再検討する必要性を認めています。
また、将来、養育費を定めたときには予想できなかった子どもや自分の病気、失業といった事情が生じた場合は、まず元夫に養育費の増額を申し入れてみて下さい。話し合いで折り合いがつかなければ調停を申し立てます。裁判所は、元夫の収入の状況などを検討し妥当な養育費の額を提示します。