出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
まずは履行勧告・履行命令を利用して、それでもダメなら強制執行により給与を差し押さえることを考えてみましょう。
養育費の支払いを約束しても支払義務者が約束通り支払うとは限りません。養育費の支払いは、毎月の定額払いが一般的で、しかも長期にわたりますから、支払いが行われなくなるのも珍しいことではありません。
そこで、審判や調停で決定した内容については、履行勧告、履行命令、強制執行といった養育の支払いを確保する法的な手段が用意されています(199ページ)。養育費の不払いが続いていて内容証明郵便などで催促しても効果がない場合でも、相手が家庭裁判所からの働きかけであれば従うタイプであれば、特別な費用もかからないので、履行勧告・履行命令を出してもらうことを考えましょう。
これで問題が解決すればよいのですが、相手が履行命令に応じない場合には、10万円の過料が課せられるだけで法的強制力がないのがこの履行動告・履行命令の難点です。
これでダメな場合には、強制執行することになります。一般の差押では支払期限を過ぎた滞納分しか対象となりませんが、養育愛の場合、子どもに対する親の責任の重大性が考慮されており、 納分だけでなく支払期限が来ていない将来の分も含めて差し押えることができます。差押財産には預貯金や不動産の他、毎月の給料などがあります。あなたの場合、調停離婚されたとのことですので、その際、調停調書が作成されているはずです。その調停調書は判決と同じ効力を有するものなので、養育費の請求権に基づき強制執行することができます。相手の財産の内容がわからない場合は財産開示請求の手続きをとることもできますが、あなたの場合は、元夫が会社員で、どこの会社に勤めているがはっきりわかっていることでしょうから、給料を差し押さえることが容易かつ有効だと考えられます。給料については、通常、4分の3に当たる部分(この額が33万円を超えるときは33万円)は差押禁止の範囲とされていますが、養育費などの定期金債権の場合は、その差押の禁止範囲が2分の1まで縮小されます。したがって、たとえば、給料からから税金などを控除した後の額が66万円までの場合は、その2分の1まで差し押さえることができます。また、 控除後の額が66万円を超えると、控除後の額から33万円を差し引いた金額まで差し押さえることができます。
養育費などの不払いの場合、穏やかな手段によって解決できないときには、元夫の社内的な立場に少なからず影響があるかもしれませんが、この際割り切って、強制執行により給料を差し押さえるという方法を取ることを考えてみましょう。