出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
将来の退職金の財産分与は難しいでしょう。 年金は分割制度がありますが、両方を一括清算する方法もあります。
退職した労働者に対しては通常退職金が支払われるのが多くの人の一般的な認識です。通常支払われる退職金については就業規則や退職金規程で定められ、退職手当や退職慰労金名目で支払われるものとなっています。退職金の額についても通常は就業規則や退職金規程によって定められていて、具体的な金額は退職者の所属していた部署や地位、あるいは勤続年数などによって変わってきます。退職金(あるいは退職年金)については、給料の後払いという性格から、給料と同視して財産分与の対象となります。 ただし、退職前のケースではまだ退職金がいくら支給されるのかが確定していないので、財産分与の額についてもケース・バイ・ ケースになってくるといえるでしょう。
また、自己都合や会社都合といった事情により退職することになった場合、辞めた状況などによっては退職金の支払がないケースや、支払額が変わる事があります。さらに会社の経営状態等の理由で、支払いが行われないことも十分考えられます。このため、 将来の退職金は財産分与に含まれないと考えた方がよいでしょう。
ただし、退職予定がある程度決まっていたり、確実にもらえる場合であれば、結婚期間に応じて退職金も財産分与の対象となります。退職金の受け取り方法としては2通りあります。1つは、 退職金が将来支払われることを条件に財産分与の対象とする方法です。たとえば、「将来退職金が支払われた場合には、その2分の1を別れた妻に支払え」と命じた裁判例があります。もう1つは、将来支払われる退職金を現在の金額に引き直して、その何割かを妻に支払うという方法です。
・年金の財産分与
離婚の際に問題となるのは老齢年金の財産分与です。年金についても、財産分与の対象となります。方法としては、やはり2通りの方法があります。1つは、扶養的な方法であって、将来夫が受給する年金のうち、妻の年金との差額の何割かを妻の死亡まで支給するというものです。もう1つは、現時点の金額に引き直して、清算的に離婚時に支払うという方法です。
なお、夫が会社員の場合、厚生年金の一部を専業主婦の妻が年金受給時に受け取ることができる制度が設けられています。この制度により、妻は厚生年金分を受け取ることができる権利を最大で2分の1にできます (76ページ)。