出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
財産分与と贈与は違います。
民法では離婚時の財産分与請求権を認めています。通常は夫婦で結婚期間中に協力して築き上げた財産を均等に分割します。ただ、「夫が愛人を作り、長い間その愛人宅で暮していて帰って来ない」など、一方に離婚のおもな原因があるような場合には、財産分与に慰謝料を上乗せするような形をとることがあります。たとえば夫に原因がある場合、妻が不動産など大きな財産を譲り受けることで離婚協議に合意するわけです。今回のケースでも、妻が家を譲り受けたのは離婚とは不可分のものであり、離婚の際の財産分与に該当するものと考えられます。つまり、取消が可能な夫婦間の通常の贈与とは性質が異なるということです。したがって、譲り受けた家を前夫に返還する必要はありません。
ところで、前夫の言う通り、民法は夫婦間の贈与は取り消すことができると規定しています(民法754条)。しかし、この規定は円満な夫婦には適用されるものの、すでに夫婦関係が実質的に破たんしているような夫婦には適用されないと解されています。たとえば、離婚当時、夫はすでに愛人宅で暮らしていたというような場合には、夫婦関係が実質的に破たんしていたと考えられ、たとえ自宅の贈与が離婚成立前であったとしても、民法の取消規定は適用されず、譲り受けた家を返す必要はありません。