出典: 離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
原則として財産分与や慰謝料には贈与税はかかりません。
財産分与では、おもに財産をもらう側が税金を支払うものだと勘違いしている人がいます。おそらく、贈与・相続の場合に、財産をもらう側に課税されるため、財産分与でも、もらう側に税金が課されると誤解してしまうのだと思います。しかし、財産分与では、財産をもらう側は、過大に多い金額や、節税目的でなければ、税金(贈与税)を支払う必要はありません。
一方、財産を渡す側については、おもに不動産を譲渡するときに、譲渡所得税という税金を課される場合があります。
たとえば、長年家族で暮らしていた自宅を、妻に財産分与し、 夫は家を出ていくというケースで、自宅を譲渡した夫に譲渡所得税が課される場合があります。譲渡所得税の計算にあたっては、 夫が自宅を元妻に渡したときの時価を、譲渡所得とする決まりになっています。
しかし、居住用不動産の譲渡の場合は、3000万円までの利益については控除の対象になります。つまり、財産分与の対象となる不動産の時価が3000万円以下であれば、税金を支払う必要がないということです。
ただし、この特例は、親子や夫婦といった間柄では適用されません。したがって、特例による控除を受けたい場合は、離婚によって夫婦関係を解消した後に財産分与を行う必要があります。
また、不動産の時価が3000万円を超える場合、特例で3000万円を特別控除した上で、居住用不動産の軽減税率適用の特例を受けることができます。軽減税率適用の特例は、不動産の所有期間が 10年を超えていることが条件になります。
なお、慰謝料は、損害賠償金又はそれに類するもので心身に加えられた損害などに起因して取得されるものとして、相手方から損害賠償として支払われるものであって、贈与を受けたものではありませんので、原則として贈与税はかかりません。
ただし、財産分与や慰謝料が以下に当てはまる場合は課税されますから注意して下さい。
① 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の価額やその他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合には、その多すぎる部分に贈与税がかかることになります。
② 離婚が贈与税や相続税免れのために行われたと認められる場合には、離婚によって得た財産すべてに贈与税がかかります。